しょうふ糊
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作品の裏打ちや表装、襖や明障子などの紙張りに使用する糊を
「しょうふ糊」と言う。漢字では「正麩糊」と書く。
小麦澱粉である「しょうふ」を煮て糊にする。
我々は日本画の画材店でこの粉末状の「しょうふ」を購入するのだが、
「生麩」「吟生麩」と書いてある。つまり「生麩糊」ということになる。
しかしこれでは「なまふ糊」である。なまふはお麩である。
web上などで、しょうふ糊の説明に「お麩の原料である生麩で」とか「小麦粉に含まれるグルテンで作る」とか記述してあるものがあるが、間違いである。
しょうふ糊の原料のしょうふは小麦粉からグルテンを除去した澱粉であり、
グルテンは麩の原料である。
「生麩糊」では「なまふ」でお麩になってしまうので「正麩糊」と書きましょうと、私の先生もことあるごとにおっしゃっている。
だから私も学生相手の板書などで「正麩糊」と書いてきた。
しかし最近読んだ、川上行蔵という農学博士の「つれづれ日本食物史」第三巻の、「麩と生麩と漿粉(正麩)」という項に面白い記述があった。
 このようにして小麦粉からグルテンを採集した残りが漿粉であったが、グルテンとは実は麩の別名であって、グルテンは麩素ともよばれているのであった。その麩素を採集した残り滓の漿粉に近ごろ「正麩」の名を付けて呼ぶとは言語道断の話だと思う。それでなくても麩の関係の名称は混乱していて困っている。漿粉に正麩の別名を付けることは早急に中止してもらいたい。漿粉は麩の類ではない。澱粉である。

「漿粉(しょうふ)」ですか。
漿粉という言葉は初見ではないが、
正麩に問題があるとは考えたこともなかった。
広辞苑には漿粉は正麩に同じと書いてある。
けれど、漿粉は麩の類ではないと言われれば納得である。
これからは「漿粉糊」と書こうか。
漢字が覚えられない。
正麩糊、生麩糊、沈糊、新糊、寒糊、古糊、沈正麩、沈生麩、吟生麩、銀正麩。
すべてしょうふ糊のことである。
いとこの旦那が奈良で修復の仕事をしているので、
そちらではしょうふ糊のことをなんと呼んでいるか聞いてみると、
「沈糊と書いてじんのりと言います」と返事が来た。
澱粉のことを沈粉(じんこ)と言う。沈粉で作ったから沈糊だろう。沈糊は新糊である。大寒の頃に作った糊を瓶で長期密閉保存したものを寒糊と言う。煮たてより古い糊だから古糊。に対して煮たての新糊。沈糊と新糊は発音が似ている。
沈正麩、吟生麩、銀正麩も発音が似ている。
ある本で経師の方が「あたくしたち職人はもともと耳だけで聞いてきたことばも多いのです。」と言っておられた。
「うちの工房では単純に『のり』と言われればしょうふ糊のことと捉えるのが当然」といとこの旦那の言葉は続く。
シンプルで美しい。
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